コンピュータ化が経済成長を困難にしている

「経済成長という呪い」ダニエル・コーエン

日頃,業務システムの開発に携わっている身として,ダニエル・コーエンの視点は,深く考えさせられるものがあった.

機械が労働を補完するのか,代替するのか.個人の労働生産性が上昇しなければ,経済成長は望めない.機械が労働を代替する場合,労働の生産性自体は向上しない.

生産性向上による労働の移行によって,全体の生産性が上がるためには,移行元と移行先の両方の労働生産性が同時に向上しなければならない.過去に起こった農業から工業への移行は,生産性の向上が同時に実現した.しかし,現在の,工業からサービス業への労働の移行において,生産性の向上が伸び悩むのであれば,全体としての経済成長を望むことは難しい.そればかりか,所得配分の不均等が発生する.物的資本の価値は,コンピュータ化が推進されても上昇しない.なぜなら,新たなテクノロジーは高価でないからである.

 

労働者の貧困が資産バブルを生み出し(いま現在はこの状況),最終的には経済成長を低下させるのは次のストーリである.

  1. 労働のコンピュータ化が労働生産性の向上として機能するのではなく,労働の代替として機能すると,労働賃金の低下が起こる
  2. 労働賃金が低下すると安いものしか売れなくなり,物の値段が下がりデフレ状態となる
  3. インフレ方向への経済成長の刺激策として,金利引き下げ政策がとられる
  4. 金利が引き下げられても,マイナス金利まで引き下げるのは困難なので,金利引き下げは,借入コストの低下に働く
  5. 借入コストが低下すると,不動産や金融資産購入にお金が流れ,その結果,不動産価格や金融資産が実質以上に上昇する
  6. その結果,バブルが起こるが,バブルは最終的には弾けて,資産価値の急激な低下に至り経済成長が低下する

 

コンピュータを何のために活用するのか.それは,労働の代替ではなく,労働の価値を高め,生産性自体を向上させるものでなけれなならない.