人は何故ロボットを作るのか

在学中にロボットのベンチャーを立ち上げた知り合いの娘さんが、「ロボットビジネスに関する評価」をテーマに修論を執筆中ということで、要求工学の観点からのアドバイスを求められた。以下、その返信(個人情報部分などは修正)。要求工学からはだいぶ逸れてしまい、参考になったかどうか心許ないですが。

Aちゃん、こんばんは。一般的にビジネスというものは、「正しいことをすれば成功する」わけではなく、「成功したビジネスが正しかった」という論法でしか語れない性質のものです。何故かというと、ビジネスのような過程は、Stochasticな過程というもので、解析的に解を得ることがそもそもできないものだからです(科学的には、エントロピーの増大過程と同じです)。そこでどうするかというと、まず、ゴールの仮説を立て、ゴール仮説から遡って現在すべきことを計画し、実行し、評価し、その結果を次の計画に反映させるという「学習」をすることになります。学習のためには、仮説を立てることが重要です。今回の場合、『「現在の各社のロボットビジネス」の評価』をするということは、「人のロボットに対するニーズとは何か」、「ロボットにニーズを持つ”人”はどのような人か」、「そもそも、ロボットとは何か」、「人は何故ロボットを作ろうとするのか」というような問いに対する”仮説”を立てることだと思います。

ところで、「ロボット」を考える場合、「人は何故ロボットを作ろうとするのか」という問いの立てかたが面白いと思います。もしかすると、今回のAちゃんの研究の切り口になるかもしれません。人にとって、「社会」は手段ではなく、それ自体を継続的に存続させること自体が”目的”であるといわれています。そのキーワードが「コミュニケーション」です。このあたりのことは、逆に、Aちゃんのお父さん(哲学)の専門だと思います。例えば、レヴィナスの他者論や死者とのコミュニケーションのあたりに、人はなぜロボットを作り、ロボットともコミュニケーションができることを確かめようとするのかという理由のヒントがあるのではないかと思います。つまり、人が作るロボットは何故人の形をとろうとし、人の動作を真似ようとするのか。そして、人はそのようなときにロボットと“コミュニケーションが取れた”と感じるのか。ロボットビジネスの成功はこの辺りにあるかもしれません。