タスク視点と成果物視点

業務システムや開発プロセスを設計し、管理し、改善するためには、プロセスを外在化、すなわち、モデル化する必要がある。以下は、プロセスをモデル化する際の視点の話し。

プロセスをモデル化する際に、人はなぜタスクの視点で描こうとするのであろうか。それは、プロセスを認識する場合、タスクの観点が人間にとっては自然である(慣れている人が多い)からである。

例えば、工場の生産ラインを記述する際、たいていの場合に目が行くのはラインを構成する機械である。生産ラインが「Aをする機械」、「Bをする機械」、「Cをする機械」… によって構成されていると認識した場合、生産ラインを”A→B→C…”の機械の並びとして描くことが自然であると感じる。しかし、生産ラインを設計する際のプロセスの本質はそれぞれの機械ではない。

このようなタスク視点に対して、製造ライン上でどのような中間成果物を作り、管理して最終製品に仕上げるかという、成果物視点による実体の構成こそが生産ライン設計の本質的な視点なのである。

作ろうとする成果物に対して、それを一度に作れない場合、段階を経て作ることになる。その際に、どのような段階に分けるかは、本質的には製造する機械によって決まるのではなく、作ろうとする製品の制約、品質管理上の確認ポイント、そして製造リスクの管理の視点から適切なプロセスが設計される。そして、ラインを構成する機械は、設計したプロセスを実現するために、プロセスからの要件と相互作用的に適用する技術が定義、もしくは開発されるのである。

このように、プロセスを設計するためにモデル化する場合には、成果物の視点からプロセスを描く必要がある。描いた業務プロセスモデルがシステム仕様の記述となってしまうのは、タスク志向でプロセスを描くことによって、システムで行われる(行われるであろう)処理、すなわち、システムの仕様が業務プロセスの中に入りこんでしまうためであるとも思われる。

ちなみに、ワークフローという言葉で用いられるときの「ワーク」の語源は、「作業」という意味ではなく、生産ラインの途中に現れる「仕掛品」、すなわち、中間成果物を意味している。つまり、ワークフローという言葉が指し示すプロセスモデル自体、本来的に成果物視点なのである。

 

yasushi_tanaka

有限会社ケイプラス・ソリューションズ代表,東京工業大学 特任准教授,大阪芸術大学 客員教授,奈良先端科学技術大学院大学 非常勤講師,博士(工学),CMM正式リードアセッサー(非更新 笑)

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